「鉄鎖のメデューサ」第32章(MF〜MF)2021年改稿版 証拠の処分に時間を取られたのか、スノーフィールドの門にはまだグレイヒース一味とおぼしき者が通った形跡はなかった。本部で書類判読を急ぐアンソニーを除くスノーレンジャーたちは、南下する
「鉄鎖のメデューサ」第31章(MF〜MF)2021年改稿版 目覚めたばかりのクルルに対し、セシリアを救うため石にしてほしいと説明を始めたロビンだったが、それは予想以上に困難なものだった。 目に見える事物に関する言葉を優先的に身につけてきた小
「鉄鎖のメデューサ」第30章(MF〜MF)2021年改稿版「臭いよう兄貴、もう残飯集めはいやだよう」「しょうがねえだろが! これを養豚場の豚どもに食わせねえとおれたちも飯にありつけねえんだ。何遍も同じこといわせんじゃねえや、タミーよぅ。俺ま
一人リレーと化している拙作「鉄鎖のメデューサ」に舞台を提供して下さっているアオ様が、登場人物の一人ラルダに関するお話を書いてくださりました。ご興味のおありの方はぜひ。2つに分かれていますが長いものではありません。携帯からアクセスしておられる
「鉄鎖のメデューサ」第29章(MF〜MF)2021年改稿版 前から迫る強敵の姿に魔力を瞳に漲らせつつも、小柄な妖魔は違和感を覚えていた。つい最近刻まれた記憶が激しく警報を鳴らしている。いつ、どこでのことだったか、蠢く触手の下の頭脳が一旋した
「鉄鎖のメデューサ」第28章(MF〜MF)2021年改稿版「クルル!」「どけ! 邪魔だっ」 馬から転げ降り駆け寄るロビンにノースグリーンの怒声が飛んだが、ロビンはクルルの前に両手を広げて立つと長身のナイトを睨み上げた。「こんなことするなんて
「鉄鎖のメデューサ」第27章(MF〜MF)2021年改稿版「敵はそんな手でくるのか、いよいよ正念場だな」 アンソニーの話に応えたアーサーへ、ラルダが尋ねた。「医者の割出しの首尾は?」「掴めた。でもノースグリーン邸の方へ戻る形になる」「かえっ
「鉄鎖のメデューサ」第26章(MF〜MF)2021年改稿版「あなたも強情な人だな、ノースグリーン卿」 取り調べ室と化した客間で尋問を続けるホワイトクリフ卿の声には、いまや疲労さえにじんでいた。「単独でこんなことができるはずがないぐらい、子供
巨匠と呼ばれる演奏家の演奏から久しく遠ざかっています。LP時代にはそこそこ聴いていたのですが、80年代にカルロス・クライバーのコンサートでベートーヴェンの「4番」と「7番」が同じに聞こえたことに疑問を感じて以来、巨匠の演奏というのは結局の
「鉄鎖のメデューサ」第25章(MF〜MF)2021年改稿版「誰か追ってくるでありますよ!」「どこだ?」 アンソニーの言葉に、振り返らないままアーサーが訊ねた。「屋根を伝っているであります」「ただ者ではないな。様子はわかるか?」「気配は一人、
「鉄鎖のメデューサ」第24章(MF〜MF)2021年改稿版「やめて! お父様っ。クルルも! その人はお父様よっ」 叫ぶセシリアにノースグリーン卿が視線を移した。小柄な妖魔もまばたきした。大きな人間から金色の目を離さないながらも、眼点のある触
「鉄鎖のメデューサ」第23章(MF〜MF)2021年改稿版「あそこへ登るの?」 二階の窓へ枝を差し伸べている大木を見上げ、ロビンは唖然とした。「ゴーレムはあの窓から網に絡めた二人を押し込めたでありますよ。君に登ってもらえないと困るです」 ア
「鉄鎖のメデューサ」第22章(MF〜MF)2021年改稿版 体を固く締め上げる網目との格闘に、小柄な妖魔が疲れ果てて身を休めていると、鍵が開く音がして扉が細く開いた。うつ伏せの姿勢ながら触手の眼点は扉の様子も見て取ったが、開けた者の姿は扉の