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日記一覧

7月31日
2018年07月31日22:56

 余ったカレーを鍋から器にうつし入れ、ラップをかける。これは翌日に持ち越す、いわば二日目のカレーとなるものだ。ただ、この時期はとくに食品の扱いには気をつけなければならない。すぐにもこれを冷蔵庫に入れて保存しておきたいところだ。でも、まだ鍋は

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7月30日
2018年07月31日11:10

近所の豆腐屋さんの前を通ると、目覚まし時計の音が聞こえた。昔ながらのジリリリという無遠慮で、けたたましい音だ。ずいぶん長いあいだ鳴り響いていたから、まだ店主は眠りこけているのかもしれない。ちょうど五時を回ったくらいだ。新鮮な夏の光が街に降り

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7月28日
2018年07月28日23:34

 これまでに一度だけサプライズを仕掛けられたことがある。十数年前の話だ。場所は森の奥にある小さなレストランで、今となっては名前も思い出せない。もの静かで落ち着いた雰囲気があり、すこしばかり値が張った。ぼくの誕生日が近いということで、ありがた

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7月27日
2018年07月27日21:05

 たぶん日常的にアイディアは降りてくる。もしかすると、ぼくたちはそれがアイディアであるとは気づかずにやり過ごしているのかもしれない。あるいは先端のほうをつまんで持ち上げ、いぶかしんだ挙句、ぽいっと捨ててしまうことだってあるかもしれない。そこ

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7月26日
2018年07月27日00:50

 以前、自転車のタイヤがパンクし、近くの自転車屋さんに持っていったところ、「なんだか安そうな自転車のってるな」と店主は苦笑した。「直して直して乗り続けて。結局は、金かかってるからね」と言われた。 そのあざけりをぼくはやり過ごすことができなか

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7月25日
2018年07月26日02:35

 更衣室でふと目をやると、鮮やかな鯉がいた。男の左肩のあたりから立ち上り、しかし凛とすましている。あまり長く見ているのも悪いと思い、すぐに目を逸らしたけれど、しばらくまぶたの裏にその像が残った。 また、あるひとはTシャツを脱ぐと、体毛がおい

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7月24日
2018年07月24日21:31

  いつも大城さんはしゃべり出す前に、大きく息を吸いこんでいく。どれだけ短いセンテンスの言葉を発するときにも、口をすぼめてヒュッと音をたて、流れの速い川を泳ぎ切るような備えをする。そうやって、ものものしい雰囲気をつくりだす。でも別にそこで何

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7月23日
2018年07月24日00:39

 死ぬほど重いものを持った。脳の血管がぶちぶち千切れて、あらゆる筋が断裂し、骨に致命的なヒビが走った。歯がかみ合わなくなり、目の高さがそろわなくなった。ほんのわずかな時間のことだったのに、ひどく年を取ったようにやつれた気がする。からだの中の

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7月22日
2018年07月22日23:32

 車を車庫に入れるときに右のミラーを鉄柱に勢いよくぶつけた。ミラーはグシャグシャっと、ものすごい音をたてて折れしまった。ミラーは赤いコードを命綱みたいにして、ぶらぶらと車の側面で揺れている。地面にはたくさんの破片が散らばっており、ずいぶん遠

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7月20日
2018年07月21日07:55

 川沿いの寂れた公園にそのおじさんはいる。60歳くらいに見えるけれど、もう少し上なのかもしれない。とても太っていて滝のように汗をかいている。びしょ濡れになった白いTシャツからは乳首らしきものがふたつ透けて見えた。おじさんは夕暮れの決まった時

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7月19日
2018年07月19日23:11

 山賊と呼ばれた男がいる。口の周りを密度の濃いヒゲがおおっていて、おどろくほど耳が小さい。たぶん50歳くらいだと思うけど、だれも本当のところはわからない。岡山の方から出てきたという話を聞いた人がいるが、これだって疑わしい。また別の方面では高

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7月17日
2018年07月18日00:03

 物忘れがひどく、手に直接メモを書いておくことがある。記憶にとどめておく自信のないものや、未来の自分へのメッセージを断片的な言葉でそこに記す。では、それが実際に自分を助けてくれたかというと、そんなこともない。途中で汗がにじんで消えてしまっ

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7月16日
2018年07月17日01:11

 国立博物館で縄文土器の展示をはじめたというそのポスターに、異様なほど惹かれた。そこで立ち止まり、しばらく時間を忘れて見入ってしまった。 その迫力、呪術的な美しさは今さらぼくが言うまでもなく強大な力をもち、たちまちに圧倒される。それは太古か

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7月15日
2018年07月16日00:27

 今朝おきてからというもの、頭痛がつづく上、頭蓋骨がしっかりとはまり込んでいないようなふわふわした感じがあった。何をするにも手足に力が入らず、陰気臭いためいきばかりが出ていく。とくに前日に酒を大量に飲んだわけでもない。むしろ睡眠は十分すぎる

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7月14日
2018年07月14日21:06

 茄子ときゅうりに割りばしをさし、牛と馬をつくる。果物をお供えした隣にほおずきをいくつか添える。それから玄関を出て、おがらに火をつけた。しゅるしゅると煙が立ちのぼり、勢いよく燃えはじめる。炎は風に押し倒れそうになるも、なんとかそこに踏みとど

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7月13日
2018年07月14日09:21

 だんだんと子どもが眉根にしわを寄せる筋肉をつけてきた。そこにはすでに5円玉を挟みこめるくらいの圧がしっかりとある。これを少しのあいだ持続させることだってできる。ぼくの知らないうちに彼女は鬱陶しさを表現するための筋肉をこしらえていたらしい。

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7月12日
2018年07月13日00:52

 昼下がりのバス停でみっともない小競り合いを見た。スポーツ刈りの青年は、「自分が列の先頭である」と主張した。太った老人は、「後ろのベンチに腰かけていたが、誰よりも早くこのバス停に着いていた」と言い張った。向こうからバスがやってくるのが見える

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7月11日
2018年07月11日14:53

 コーヒーを飲んだ後におしっこをすると、コーヒーのにおいが立ち込める。これは色が変わっただけのコーヒーではないかと思うくらいはっきりしたにおいだ。からだの中に何も置き残すことなく、すみやかに通過していくらしい。 個人的には、とくべつコーヒー

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7月9日
2018年07月10日01:28

 人がぎっくり腰になる瞬間を見た。ジャッという不思議なうめき声をあげて、その人はゆっくりと床に沈み込んでいった。そしてぜんまいが巻き戻ったみたいに徐々に動かなくなった。 「どうしましたか」とぼくは聞く。でもその人は、声を奪われてしまったみた

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7月8日
2018年07月08日17:47

 日々からだの中に澱のようにたまっていく感情が、たとえば便所にいるときにふいに浮き上がってくる。理性がよそ見をしているのを見計らって、それは奇声という形をとって口から出ていってしまう。ドアの向こうにはアッという甲高い何かの掛け声みたいなもの

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7月7日
2018年07月07日16:17

 たとえば白いポロシャツに醤油がこぼれても、そこまで悲嘆することなく食事を続けることができる。あとでハイターに漬ける、というカードをぼくたちは携えているからだ。ハイターは、その使い方さえ間違えなければ、だれかのそういったミスを帳消しにしてく

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7月6日
2018年07月06日14:35

 ときおり、不発弾の夢をみることがある。実際に身近にあった不発弾のことだ。それは太平洋戦争末期、墜落したB29が積んでいたもので、それ本来の役割を果たさないまま地中にもぐりこんで、すやすやと眠り続けていた。そのうちに戦争はおわりを告げ、街は

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7月5日
2018年07月06日01:10

 特急電車を見送って、あえて各駅停車の電車にのりこんでいく。車両には自分1人しかいなかった。開放的な気分になって、長椅子にゆったり腰をかけ、足をのばした。優雅なひとときだった。ときおり、車窓に見える景色について何かをつぶやいた。雲がたなびい

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7月4日
2018年07月05日00:20

 洗濯機から取り出したタオルを一度、空中ではたく。パンっと小気味いい音がなり、そこにあった皺を一瞬で均してしまう。 ぼくはそれを羨望のまなざしで見つめる。自分ではあの音をうまく出すことができないのだ。えい、と振ってみても何かくぐもったような

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7月3日
2018年07月03日22:07

 昨晩、近道をしようと公園の中を突っ切る時に、ふっと街灯が消えた。ぼくは驚いて足を止め、きょろきょろとあたりを見回した。まるでだれかがスイッチに指をおいてぼくが来るのを見計らっていたようなタイミングだった。頼ることのできる光がふいに失われて

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7月2日
2018年07月02日09:52

 食堂で激しくムセ込む男を見た。立て続けにする咳は胃が裏返ってしまいそうな音をたてた。顔を紅潮させていて、見開いた目の中まで真っ赤だった。苦しげに開いた口には、チンジャオロースらしき色合いのものがのぞける。おそらくそれの食材がふいなはずみで

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7月1日
2018年07月02日00:28

 よく行く床屋さんは驚くほど物知りだ。お客さんたちとあれやこれや話をしているうちに、あらゆる方面に詳しくなったと本人は言う。政治からスカトロまで、話題は幅広い。聞き上手で気取らない雰囲気があるから相手の話をするすると引き出していくし、暇なと

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6月30日
2018年07月01日00:12

 一睡もせずに健康診断をうけると、10%ほど悪化した数値が出るという説があるけれど、まさにそんな感じのおしっこが紙コップに取れた。一晩の無理が、苦悶が、叫びがそのわずか数十ミリの液体に凝縮されている。ものすごい色だった。それはぼくに地平線に

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