ゴッホには少し及ばぬ夏葉書ヒマワリは役目終えずに向きをかえ母の書いた暑中見舞いに下手くそな俳句を添えてみた。腕はさておき、向日葵を画材に選んだ心意気だけはゴッホもかくやというものだか、向日葵は短時間のうちに向きをかえ、じつに、描きにくい花
俺が『あそこで寝てる人の具合はどんなん?たいした事ないん?』と聞こうとした時、控え室から、俺の行方を探していたのか、あたりを見回すようにして母が出て来た。母は俺の話している相手をみるとギョッとしたようになり『ヨシヒロ!』と叫ぶと、腕をつかん
その女の人が一心に見つけている先に、やはり、美保子叔母とおなじ、管と包帯だらけの人がよこたわっている事に気がついた俺は無意識に『あ』と言ってしまった。この人こそ、美保子叔母を重体の事故に巻き込んだ相手側の運転手さんではないかと思ったからだっ
交差点炎暑の事故や肌寒く今朝の事だった。いつも通っているプールの帰り、近くの橋のたもとでいきなり大きな音がしたと思ったら乗用車が横転していた。どういった事でそうなったのか判然としないのだが、やがてそのうち、消防車は来るは、パトカーは来るはで
かねてよりカワタカには良い感情を持っていないシゲイチだった。だからこの遅れが、シゲイチの気分をそうとう害したであろう事は想像にかたくなかった。しかも、病床にあるシゲイチが、ヒマにまかせ、様々な妄想を生むであろう事も簡単に想像できた。シゲイチ
シゲイチはヨコになっていたが俺がやって行くと喜んで起き上がった。そこは去年、シゲイチの父親が、やはり、今日のシゲイチ同様、ヨコになっていた部屋だった。父親は薬石効なく亡くなったのだが、その事に気がついた瞬間、俺は『やっちもねぃ事を思い出した
ネクタイで知る夏痩せの寝起きかなネクタイをはずしたあとに天花粉ネクタイの模様の位置でひとくくり今日はバイト君が願書写真のためのネクタイを持参でやって来た。巻き方を教えて下さいと言うが、自由業の俺もいいとしの割に詳しくない。二人でああだこうだ
雷鳴はそのウチ、本格的なモノになって行った。いち早く反応したのはリエだった。リエは唇まで真っ青にして『おちない、ね、おちない』を繰り返した。ヒトミとミドリも『怖い、怖い』を連発した。俺も怖かったが、先をこされた形になってしまい、いきおい、『
はったいを祖母は少々甘くしてはったいに入れる砂糖のましろさよはったいは麦湯たす手も慎重に子供のころ、祖母がよく茶色に練ったものをオヤツがわりに出してくれていた。祖母は「はったいこ」と言っていたのだが、今回歳時記を見ていて、このような字を用いる
父を上手に、俺、ヒトミ、ミドリ、リエ、そして母と座った食卓には母の苦心のあとがズラリと並んでいた。夏野菜をふんだんに取り入れたカレー。細く刻んだキャベツとレタスを中心にした野菜の盛り合わせ。その中には彩りとして、ゆで卵の黄身の部分だけをすり
Made in Japanメキシコへ続くまっすぐな道で君が立っていた蜃気楼のように、、カリフォルニアの空背景にしたら少しだけ心細い君の姿さ、、オンボロの車 こんなんでよけりゃ乗って行くかと窓をあけたその時真っ黒な髪が奇麗すぎたから不意に泣けたボク
北の男のなみだ酒しばれる窓を片手でふけばふいた形に向こうが見えるだけど向こうもふりつむ雪の雪の白さにため息ばかりついてくるかと言えないくせに忘れきれない俺だからすまぬ すまぬとわびているのさ今さらにすまぬ すまぬと北の男のなみだ酒、、、、
ヒトミ達は俺に『どこに行っていたの?』『水泳から帰って来たと思ったらまたおらんようになって、、』と執拗に聞いてきた。詳細を説明するのが面倒くさかった俺は『どこでもええがこのトシになると人には言えんことの一つや二つある』と誤摩化した。ヒトミと
あの鐘が鳴るころお願いだよボクの事はだから恨んでもいいパパとママの待つお家にお帰りよ そのまま、、、あの鐘が鳴るころこの街を出ようと泣きそうな目をした君から告げられた北風が吹こうと粉雪が舞おうと真実の愛ならばそれだけで幸せ真っ白なその指で
姉貴小遣いがないのならいえばいいのと言いながら日比谷の7時は人込みばかり何か話しがあるんだろ尋ねる俺をごまかして姉貴は陽気に振る舞うばかり、、、あの人と別れたと何気なさそに打ち明けるざわめく屋上ビールのジョッキ別にあんたのせいじゃないも
雨のウォーターフロント別れたいわけじゃないけどお前の事が死ぬほど好きになってる俺だからこれ以上つっ走ったら後戻り出来ないぎりぎりだよ今の心は、、雨のウォーターフロント初めて出会ったのもこんな雨が降る昼下がりさ雨のウォーターフロント怪我し
かっさんの店のソフトクリームはひと味変わっていた。 それは、一度コーンの中でトグロ状にまいたクリームをコーンごと袋にくるみ再度冷凍庫の中で固めると言った塩梅のモノだった。 それは良い感じにかたまっており真夏にたべるには最適だった。 ケーキなど
家に帰ってみると父は休憩の時間と見えて、応接間で新聞を読んでいた。 今年の夏から購入したクーラーが、細い四本足に、箱のような本体を乗せ、ガンガンに稼働していた。 輩出口の先には、数本の、ピンク色をしたリボンのようなビラビラが括り付けられており
俺が『どしたん先に帰ったんじゃねかったん』と言うとカワタカはニヤニヤ笑いをしつつ『あがなバカ、相手にしとれんソフトやこ子供っぺいわ』と言った。俺が『ふうん』と頷き、『よう言うわ。自分じゃってレモンの店でジュース飲んどるくせにレモンの店なら大
服を着たカワタカはさっさと自分だけ、荷物を小脇に持つと、更衣室をあとにして行った。サトシやミツヒロは申し訳程度に『これからみんなでかっさんの店でソフト食うて行くんじゃけんどおめぇも行かんか?』と誘ったが『わり!俺は忙しい』とだけ返事をすると
更衣室はプールをあがった脇にある、コンクリートでつくられた箱のような建物だった。扉をあけると中は真っ暗で、熱されてムッとするような空気がこもっていた。天井にちかい位置に空気抜きのような小窓があり、そこから入るあかりが床に細長い、切り絵のよう
三ヶ月海峡真夜中の空を空を空を破った爪痕に似た月を頼りにまた、舟を出す濤も冥いししぶきもいたいだけど行かなきゃならない俺さ嗤ってくれよ三ヶ月海峡、、、最初からそうさそうさそうさ添えない二人だけれどそれを運命と決めたくなくて言葉少なに
必死で水をかいていた。目はかたくとじられているためプールの底はおろか、揺らめくような水の影をみる事など不可能だった。『ボロさんボロさん』という声援が古いラジオの音のような不安定さで聞こえてきていた。いつから泳いでいるのか、永遠に、たどりつけ
ShoesShoes思い出だけがボクを縛り中々進めなくて何かを言い訳にして立ち止まってるんだ ねShoes周りは先に行ってしまい残るのは僕だけさ思い出たちに振り回され混迷の森のなか出逢いを求めてるのなら先へ進んだ方がいいのに変化を求めるのなら先へ進
織り姫に見えた 夏休み はじまった ばかりじゃないのと あの人がそういって ボクを見上げれば 涼風が走るから 吊りしのぶ鳴って 言いかけたひと言も 切り出せないまま、、
母はしゃがみ込んでいるナツコをゆするようにし『ナッちゃん。あんた、いつからそこにおったん』と言った。ナツコは黙ったまま目頭を押さえていた。父がそんな母を『そがに、やぁやぁ言うな。』と止め、『えかったの。お前の努力のかいがあってシノハラの罪、
流星群消灯あとのバスの中で眠れぬままに過ごすボクは朝になっら会えるあなたの事をアレコレ考えている許しておくれ今までの事はボクと帰ろう東京へいろんな苦労もあるけれど二人してなら乗り越えられる牡牛、おおいぬ、オリオン、双子小熊、ペガサス、
女優そうよ悲しい時ほど笑えって教えられたの淋しい陰りなんかは私、似合わないわ、、あなたはそういい手摺りにもたれて階段を上ろうとするボクを両手で止めたね心の中まで演じきれはしないのにあなたの涙は知っているボクだよ、、若いあの人が最後の恋人
女友達どうしてあの人追わないのあんなにいい人を駅の隅っこでずっと待ってたよあんたの来るのをひたすらねカンでわかるのさ女のカンさ真剣なんだよ、、どうしてあの人追わないのあんなにいい人を長い付き合いの友達だからこうして教えてあげるのさカンで