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日記一覧

ヤマナカ君は入って来たリアンを見ると驚いたような顔をし、『お前ひとりか』と聞いた。リアンは『そうじゃ。わい一人じゃ』と言い、『お前かぁ!ヒサモトやノグチをええようにあつこうて悪さをさしとる言う大学生は』と言い、土足で畳を蹴った。砂塵が舞い上

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その間にも、『ボロさん、ボロさん』と言う、リアンの声は遠くなったり近くなったりした。それは、リアンが迷っている事を物語っていた。俺は『ここじゃ、ここじゃはよ、見つけて!』と心の中で唱えつづけていたが、大きな声を出したら、また、ヤマナカ君に殴

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俺はヤマナカ君に手足を縛られてしまい、部屋のすみに転がされてしまった。不自然な形で後手に縛られた手が最前からジワジワと痛みを訴えていた。ヤマナカ君はそんな俺を見下ろすようにすると、『ヨシヒロちゃんが悪いンだぞ』と決めつけ、『俺はこんな手荒な

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床に転がった懐中電灯の回転にあわせて、光の輪がゆれた。はずみで、すすけた天井や、土間の一部が光に浮かび上がって見えた。一瞬の事だったが、その時、俺は天井の片隅に、蜘蛛が巣を張り巡らせているのを発見した。ヤマナカ君はそれまでの冷静さをかなぐり

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その時、俺はヤマナカ君の言っている事の意味がわからず『え?』と言ってしまった。すると、ヤマナカ君は再度、懐中電灯をグルグルまわしはじめ『だから』と前置きし『僕の塾のあった晩とヨシヒロちゃんの塾のあった晩とが重なっているって事さ。つまり、僕が

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そこは、ヤマナカ君の仲間としてつき合っているノグチやヒサモトが隠れ家として遊んでいた場所だった。下校途中に一度引き込まれ、乱暴を働かれそうになった事があったので、明晰に覚えていた。その家も最前のリアンの家同様、空き家であり、電気など通ってい

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パリ祭
2016年07月17日22:20

パリ祭の今日は岡山のライブハウスでシャンソンを歌う集いに参加した。『愛の讃歌』と『サマータイム』中にお召し替えを入れてまでの熱演。カラオケは別として、こんなステージでシャンソンを歌うのは十年ぶりだったけど、いやぁ、楽しかったなぁ。歌の巧拙は

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ヤマナカ君は地面に座り込んだままの俺に向かって手を差し伸べ、『どう、起きれる?』と言った。気がつくと俺は地面に座り込んだままだった。俺は『大丈夫、起きれる』と言うと、ヤマナカ君の手を退け、自力で起き上がった。立ったついでにこのまま、一気に家

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俺は『ワィは今夜はここで寝る』というリアンを残して、家路についたが、帰りの夜道は足取りが重かった。リアンから聞かされた話のせいもあったが、電気も通っていない家にリアンを一人残して来たという事が気がかりだったからだ。俺はリアンに『ウチに来たら

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俺は『リアン、どしたん?いつ帰っとったん』と言いつつ、リアンのソバに行った。リアンは顔にかざしていた懐中電灯を今度は俺の方に向け、丸を書くような仕草をし、『ひっさじゃの』と言った。それは『ひさしぶり』という意味の、俺達の間の、隠語だった。俺

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俺はマナブの手を『マナブちゃんの手、ヘドロの匂いがする』と言って、払い除け、『ホンマじゃ、ナッちゃんの声じゃ』と言った。『どこらじゃろ、、』声のする場所が今ひとつ把握できなかった俺は『ナッちゃん、どこにおるん!』と大声をだしそうになった。す

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マナブも驚いただろうが、俺はもっと驚き、『マナブちゃんじゃが!どしたん、』と、叫んでいた。マナブは『ヨシヒロちゃんこそ、どしたん?』と言い、『おい、おい、おえんがな!小学生がこがな時間、フラフラしとったら』と叱りつつ、ガサゴソと音を立てなが

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小学校を曲がると、ひと際夜道は暗くなった。そこは、かつての級友であったリアンの家に行く時などによく歩いていた道だった。八木のおじさんの家は、その近所だったので、どこに行けばいいのかは理解できていたが、こんな時間に通るのはマレだったので、俺は

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