俺が『これ、マナブちゃんが書いたんじゃろ、マナブちゃんの字じゃが』と言うとナツコはしばらく躊躇っていたが『そうよ』よ言い、シノハラさんは『マナブちゃん言うんは、あの、お正月に、ウチに来た学生さんかね?』と言った。ナツコは『そうです。』ともう
シノハラさんはナツコの隣に座っている俺の姿を見ると、にわかにハッとした顔になり『坊ちゃんも来とったんですか、、』と言った。俺は『ウン』と言おうと思ったが、それより早くナツコが『そうなんです。』と頷き、『と言うのがね、このヨシヒロちゃんがね、
ナツコはその店に俺より早く来ていた。俺の姿を見つけたナツコはそれまで見ていたメモのようなモノから目線をあげ、大きく手をふった。それは、どこかホッとしたような感じに見えるナツコだった。俺もナツコのように手をふろうかと思ったが、気恥ずかしくなっ
母が「刑事」と言ったのは親戚のハルキの事だった。ハルキは一人でやって来ていた。ハルキも刑事であるのだから、母が嘘を言ったわけでは無いのだが、相手がハルキとわかって、俺の胸中はいくばくか軽くなった。ハルキは応接間の椅子に、長い足を持て余すよう
その夜の山火事は思ったほど激しいものにならず、ほどなく鎮火した。すばやい通報や、すみやかな消防士達の働きが、火災を最小限度のものでくいとめた功績であったが、過去数回に渡って起こった不審火のタメ、従来以上に緊張感を高めていた自警団の活動による
その人の事を考えてみたが、その人のイメージと、お宮で交わされていた密談のイメージがどうしても重なり合わず、俺はもどかしい感じになって来た。そのウチ『テング』と言う言葉など珍しいようで珍しくもなく、それを使う人は、何もその人一人では無し、今夜
ミツマサは一緒に帰ろうと誘って来た。俺は、正直迷惑だった。こんな近所まで来ておきながら、何故、塾に来なかったんたど、質問攻めにあう事は目に見えていたからだった。すでにミツマサは、かぎ裂きのセーターを興味まんまんの目で見ていた。俺は、とっさに
境内や、賽銭箱の周囲を探したが見当たらなかった。そう言えば、最前、隠れていた茂みのナカで、何かが裂けるような音がしたなぁという事を俺は思い出した。そのさい、枝のどれかに絡め盗られたのかもしれない。そう思った俺は、茂みの方に戻ってみる事にした
『今日は四月一日,世間でいうところの,四月バカ。嘘をついてもいい日だよね。 俺の今日一日は、仕事につぐ仕事で大忙し。花見帰りの客が酔っぱらって遣ってくるは,バイトの子が休みたいなんて言ってくるは、ガキが店ん中走り回って備品割りそうになるは、
しばらく考えていたが、声の主を思い出す事はできなかった。そのウチ俺は『あ!』と声を上げそうになった。時計など持ってはいなかったが、塾の開始時間が、とうにすぎているに違いない事に気がついたからだった。俺はどうしようか迷った。今から駆け込んでも