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日記一覧

やって来たのが俺達である事に気がついたシノハラさんは驚いたような顔になり『先生、、ありゃ、奥さんまで、、』と言うと、車に近づいて来た。父は『やって来てしもうた。いきなりですまんのう』と言うと『この間の作品はどがんじゃった。出来が見とうてのう

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言うだけ言ったナツコはワッと泣き出し、マナブは狼狽し、といった有様が展開し、母のとりなしでナツコがようやく泣き止んだ頃には俺までも翌日のシノハラさん訪問にお供しなければならない羽目になってしまっていた。『マンガ、マンガ』と、それでも未練がま

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死人が出たというわけで今回の火事はそれまでの火事より数段重く警察はとらえていた。刑事達は、木炭のようになった焼け跡をつぶさに掘り返し、出て来た燃え殻のようなモノをビニール袋に納めたり、事件当夜、不審な人物を見かけなかったか聞き込みにまわった

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父が不用意にもらした『歯形』とか『黒こげ』と言った言葉からは、父の言い方のせいかも知れないが、なぜかそれほどの凄惨さが漂って来なかった。むしろある種の滑稽感のほうがまさっていた。俺は黒く焼けってしまったイモかなんかを咄嗟に連想してしまった。

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夜も深まった頃、火事を知らせるサイレンの音は元旦の街をけたたましく駆け抜けて行った。その音を、俺は夢うつつに聞いていた。夕方からの疲れがそうさせたのか、前回の時のように完璧に覚醒する事はなかった。サイレン音や廊下を駆け抜けて行くバタバタとい

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父に声をかけて来たのはたまに見かける、夜泣きソバの屋台をひいているイナセなお兄さんだった。お兄さんは『センセ、そないおかし気な声ださんかてえやおまへんか』と言った。お兄さんはなぜか大阪弁だった。父は『なんならアンタかいきなり声をかけんでくれ

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時期が年末であったという事もあって、正規の消防隊だけではなく、民間からも消防団のようなものが編成され、夜回りの目を厳しくするなどといった火災を未然にふせぐ手だてが様々に講じられた。同級生のキョウコやエミの兄のケンイチやマサシなども若手の民間

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それは昨年の終わり頃からはじまった火事騒ぎに因をなしていた。最初の火事は廃屋になった工場跡から出た。深夜の事だった。寝入っていた俺の耳に高く低く不穏な音が聞こえて来た。最初、それは、何かの喝采のように聞こえた。が、やがて、それが急をつげる消

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それから俺達は近所のマナブの家まで歩いた。その間も、ナツコは熱にうかされたようにヤマナカ君やシノハラさんの話題を持ち出し『男の人が何かに挑んでいる姿ってカッコええよね』と言い『ね、ね』と、俺達に同意を求めてきた。俺とシゲイチは『そうじゃなぁ

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