ひとしくんは俺の姿に気がつくと、鉄棒を握りしめ、さっと前回りをした。それは鮮やかな演技だった。やがてひとしくんはパッと砂場に着地し、『ざっとこんなもんじゃ』と言った。シゲイチより上手な決め方だった。俺は『すげい、すげい』と言い、おもわず拍手

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俺はかっさんが何故、不機嫌になっているのかわからなかった。その頃の俺は、死んだ祖父が町の名士だった事もあり、町中、好き勝手な振る舞いをしていた。過保護で、怖いものしらずに大きくなっていたからだ。例えば、店先にならべられている果物が邪魔臭いと

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『ほんなら、今日、ワィが見たんがその佐々木言うおっさんなんかな』俺がそう言うと、母は『そうじゃ。』と顔をしかめ、『ころくに育てとりもしとらんのに、育ててやった言う事を恩着せがましゅう言いたてて、恩を売りにやってきては、ああして小銭を貰うて帰

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