そのうち、豆をまいていたような雨だれの音が、徐々に小さくなって来たと思ったら、不意に周囲が明るくなった。母と俺は同時に『あ』と言い、『停電、終わったんとちゃうか』と言った。電灯の紐を引いてみると、案の定、灯りがともった。すると、母は『やれや
押し入れへ上半身をいれて、どんどんと停電への備えをすすめて行く母の、モゾモゾと左右に動く臀部を見つつ、俺は『なぁなぁ。そがん事より、タジマのオバ(この頃からオバちゃんと言わず、約めてオバと呼んでいた)なんで怪我したん?怪我の具合どがなん?』
一拍あって、もの凄い雷鳴が轟いた。轟くというより、何かが爆発した音に近かった。俺は女の子のような声で『きゃ!』と言い、急いで左右の親指で耳をおさえ、のこりの指で目を押さえた。それは小さかった頃からのクセで、稲妻が光ると必ずそうしていた。母も
学校へ着くまでには雨は本降りとなった。幸い、雷の気配はなかった。芳しい成績をあげなかった事に加えてのこの悪天が一気に俺達の気分を消沈させた。帰りの車内は、それこそ、水を打ったような静けさとなった。大熊先生やタカオ先生をはじめ、クロザサのよう
それからの俺は、大熊先生や、名前も知れない先生に命令されるままに、記録用紙を片手にプールサイドを走りまわった。誰の成績がどうで、誰の成績がどうだったかといった類いの事は全く覚えておらず、ときおり、どこかの生徒がもの凄いタイムを出した時に『お
やがて、俺達は学校別に分けられ、プールサイドに並ばされた。改めて見てみると、もの凄い生徒の数で、その多さに俺はいまさらながら、圧倒された。競技に参加するわけではない俺にまで伝わってくる、独特の緊張感が、そこには漲っていた。ヒタヒタのプールサ
点呼をすませた俺達は、おのおの、会場の中に入って行った。ちびっ子やその父兄でにぎわっている夏休みのプールしか知らない俺だったが、今日は、いささか様子が異なっていた。勿論、ホットドック屋の姿もみえなかった。プールサイドが控えの場所のようになっ
北海道では雪のふったところがあったそうだが、まさに今日は『梅雨寒』と言う言葉がピッタリの陽気。こう、コロコロと、猫の目のように、日替わりで寒暖が交互していると、それだけで、体調管理が一苦労だ。爾来、自律神経のあまり良くない俺は、季節の変わり