「痛いとこない?」そう聞くと母は弱々しく応えた。「…無いよ…」「苦しいこと無い?」「…無いよ…」数か月前のことだ。でも眠ってばかりいる母の眉間にはシワがよっていた。痛くは無いかもしれない。苦しんでいる様子もない。けれど…。辛くないわけがない
始まりは猿だった。進化論ではない。いじられキャラの始まりのことだ。「ヨースケ!お前、なぜそんなところに!」テレビ画面に映された猿に向かって、主人が軽くふざけて次男の名前を言った時がその始まりだった。次男はまだ園児だった。「やああん」幼かった
定年後の4月に予定していたモロッコの旅を、イスラム教圏のテロなどの不穏な世界情勢を警戒してパラオに変更したのは一月。 それから1ヶ月後くらいに旅行会社の担当者から連絡があった。なんでもエコノミーで予約していたのに手違いでビジネスになっていた