「大変なことが起きた」正助はぽつりと言った。「何なのよ、正さん。話してよ」さやは泣き出さんばかりの声である。重い沈黙が流れた後で正助は口を開いた。「召集令状が来た。お国から。本当なんだ」「えっ。戦争に行くの」さやは叫んだ。「まだ、どこへ行く
◇北朝鮮に何かが起きているらしい。相次ぐ漁船の漂着は、魚という食料を求めて荒れた海で無理な漁をしている結果だと言われる。 先日、板門店で脱北の兵士が撃たれる事件があった。この兵士を手術した時、内臓からわずかなトウモロコシ片が見つかり、北朝鮮
◇譲位、改元が近づいた。平成31年5月1日が有力と言われる。私は県会議員時代、小渕総理の時、「平成」を経験した。「譲位」とは、生前に天皇が位を譲ることで、江戸時代の光格天皇以来である。光格天皇は日本の歴史、そして皇室の歴史上特筆すべき人物で
◇東京は身を切るように寒かった。母校・東京大学のある会合に出た。そのついでに西洋史の研究室に立ち寄った。一歩踏み入ると懐かしい光景が甦る。壁には歴代の教授の写真が掲げられている。一際目につむのが林健太郎先生の端正な顔である。静かな容貌の中に
◇19日は忙しい日曜日だった。諸事があったが、みどり市議会の定数問題に関し、現行の20人から18人にすることについて行われた。公述人は4人で、そのうち2人は公募の市民、2人は学識経験者。私は学識経験者として意見を述べた。他の学識経験者は関東
◇今週は誠に忙しい。ざっと挙げれば、15日(水)、毎週水曜日に実施する「へいわ845」の講義で「命のビザ・杉原千畝」を語り、明日18日は人権についての記念講演を行い、19日はみどり市の公聴会で議員定数の問題で学術経験者として意見を述べ、夜は
大正6年のある日、正助たちは久しぶりに万場老人を訪ねた。正助の傍に座るさやの姿は、新妻の雰囲気が漂っている。それを見て老人が言った。「若いというのはいいものじゃな。は、は、は」「さやちゃんも勉強したいと言うので」「おお、それは感心じゃ。これ
◇地球誕生46億年、ジュラ紀、白亜紀、チバニアン、地磁気の逆転と、一般の人の耳慣れない文字が新聞やテレビで大きく報じられた。 地球の歴史を示すある年代が日本の名前で刻まれることになる。やがて教科書にも載るだろう。これを機会に地球史の知識を自
◇中国料理教室に出た。群馬県中国残留帰国者協会の恒例の行事。多くの日本人が参加し中国人指導で水餃子をつくる。誠に美味で、つい食べ過ぎるほど食べてしまった。 会場は群馬県社会福祉総合センター。私は協会の顧問として次のように挨拶した。「今、日本
◇上野村で墜落事故と聞いて、直ぐにあの日の日航機事故を連想したのは私だけではない筈だ。8日午後、上野村役場の近くにヘリが墜落し4人が死亡した。22人乗りのヘリは急旋回して落下したという。私は日航機の慰霊の他にも楫取素彦の講演で3度この村を訪
権太が言った。「うーん。世帯を持つのは大変だと思うが」「家を持つことは後でもいい。正式に嫁さんになったことを集落に知らせることが必要だ」こう正男が言うと、権太が一歩踏み出して笑顔を作った。「御隠居さんに仲人になってもらえ。式は白旗神社がいい
◇座間市の9人殺害事件は日本の犯罪史に残る大事件である。伝えられる白石隆浩容疑者の言動からは責任能力には問題がなさそうだから、死刑判決は免れない。切断された9個の首、数百の骨片、これらと狭い密室で同居していたというのだから信じ難い。異臭が伝
◇3日、ぐんまマラソンで10キロを完走した。1時間32分。昨年と比べ約10分遅れたが全力で快走できた達成感は秋の晴天の下で何ともいえないものであった。4日前に私は満77歳を迎えた。この歳で10キロを完走できたことを神に感謝した。365日、毎
ある日のこと、正助はさやがいつになく深刻な顔つきであることに気付いた。正助と会っても視線を避けるし、一見して唯事でないことを窺わせた。何だろう。湯川に身を投げるようなことでなければよいが、と正助は心配に駆られ思い切って声をかけた。「さやち